中国留学に必須のVPN:仕組みから選び方・設定まで徹底解説

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VPNの記事はアフィが多すぎる。ここは私が使った実際の経験からおすすめを書く。アフィリンクなんかは使っていないから、安心してほしい。誰かの役に立てば、と願う。

結論から先に。MullvadVPNを使って、設定を以下の通りに変えるだけ。

  • Multihop
    • [ ] OFF
  • DAITA
    • [ ] OFF
  • VPN Settings
    • Launch app on start-up
    • Auto Connect
    • Kill switch
    • Lockdown mode
      • 🟩
    • Tunnel protocol
      • WireGuard
    • Wireguard Settings
      • Port
        • Automatic
      • Obfuscation
        • UDP-over-TCP

中国に留学する日本人学生にとって、インターネット環境の制限を乗り越えるためにVPNは欠かせません。本記事では、VPNの基本から「ノーログポリシー」の重要性、中国で実際に使えるVPNの比較、設定方法、中国のネット環境での運用方法まで、リアルで実践的なポイントをまとめました。

1. VPNとは何か?

VPN(Virtual Private Network)とは、公共のインターネット上にプライベートな暗号化通信の「トンネル」を作り、離れたネットワーク同士を安全に繋ぐ技術です。これにより、自宅や大学寮のネット回線からでも、まるで国外の安全なサーバー経由でアクセスしているように通信できます。通信内容は暗号化されるため、第三者や政府機関から内容を盗み見されにくくなります。また、自分の接続元IPアドレスもVPNサーバーのものに置き換わるため、所在地を偽装できるメリットもあります。一方で、通信はすべてVPNサーバーを経由するため、VPNサービス自体があなたの情報を守る仕組みになっていることを核にする必要があります。具体的にはノーログポリシーの順守、第三者機関の審査を定期的に行っていることが重要です。

中国では政府によるネット検閲システム「グレートファイアウォール(GFW)」が存在し、GoogleやInstagraといった海外サイトやサービスの多くがブロックされています (The Great Firewall and the Perils of Censorship in Modern China — Yale Journal of International Affairs)。そのため、中国からそれらのサイトにアクセスするにはVPNが実質的な解決策となります。VPNを使って中国国外にあるサーバー経由でアクセスすれば、検閲の壁を越えて日本や他国と同じインターネットを利用できるというわけです。

VPNの種類(方式)にはいくつかあり、代表的なものにPPTPL2TP/IPSecOpenVPNWireGuardなどがあります。古いPPTPは実装が簡単ですが暗号強度が低く、L2TP/IPSecは比較的安定しています。OpenVPNはオープンソースで信頼性が高く、UDPやTCPポートを選んで動作可能です(ただし中国では通信パターンを検出されブロックされることもあります (How To Bypass The Great Firewall Of China - GreyCoder))。WireGuardは新しいプロトコルで高速ですが、標準では隠匿性(ステルス性)が低いため中国では追加の細工が必要です。このようにプロトコルごとに特性があり、速度やセキュリティ、検出されにくさに違いがあります。

2. VPN選びのポイント

数あるVPNサービスからどれを選ぶべきか悩むところですが、中国で使うVPN選びでは以下のポイントが特に重要です。

  • ノーログポリシーの重要性:VPNは通信内容を暗号化しますが、VPNサーバー自体には「どの利用者がどのサイトにアクセスしたか」というログが残りうるため、サービス側がそれを記録しない「ノーログポリシー」を掲げているかが重要です。ログを取るVPNだと、利用者のオンライン活動が記録されてしまい、万が一当局に提出されれば利用者のプライバシーが侵害されます。実際、ユーザーの閲覧履歴など使用状況を記録するVPNは「VPN本来の目的に反する」危険な存在です (VPNs By Logs In 2025: Importance Of Loging Policy)。幸い2025年現在では、多くの主要VPNがユーザーのプライバシーへの懸念からログ不保持(ノーログ)を掲げています (VPNs By Logs In 2025: Importance Of Loging Policy)。特に中国のようなネット監視の厳しい環境では、ログを残さないサービスを選ぶことで「何を見ていたか」が後から追跡されるリスクを減らせます。
  • クーポンやアフィリエイトVPNが信用できない理由:インターネット上には「VPNおすすめランキング!」のようなサイトが多数ありますが、その多くは特定VPNのアフィリエイト広告になっており、必ずしも中立的とは言えません (The Trouble With VPN and Privacy Review Sites - Privacy Guides)。一見「ベストなVPNトップ10」のように見えても、実際にはレビューワーが自分たちに高いコミッションが入るVPNを上位に並べているだけ、というケースも少なくありません (The Trouble With VPN and Privacy Review Sites - Privacy Guides)。こうしたサイトでは中国で実際に使えるかよりもセールスポイントや割引クーポンが強調されがちです。特に「中国でも使える!」とうたいつつ実際には使えないVPNを勧めていることもあるため注意が必要です。本当に信頼できる情報源か、自分で検証したユーザーの生の声を参考にしましょう。
  • 返金保証の落とし穴:多くの有名VPN(例:ExpressVPNやNordVPN)は「30日間返金保証」などを掲げています。一見リスクなく試せるように思えますが、中国で使う場合はいくつか落とし穴があります。まず、中国に入ってからそのVPNが繋がらない場合、返金を申請するための連絡やサイトアクセス自体がブロックされていて困難になる恐れがあります。また長期契約割引を適用してしまうと、返金保証期間を過ぎて急に使えなくなった際に残り期間の費用が無駄になるリスクもあります。実際、中国では情勢や技術的な攻防で「昨日まで繋がっていたVPNが今日から使えない」ということも起こり得ます。返金保証を過信せず、「本当にそのVPNが中国で機能するのか」を見極めることが大切です。

3. 実際に中国で使えるVPNの比較

では、中国の厳しいネット環境で実際に動作すると確認されているVPNにはどんなものがあるでしょうか。筆者自身の経験やユーザーの評判をもとに、主要なVPNサービスを比較します。

Mullvad VPN(マルバド)

Mullvadはプライバシー重視で知られるスウェーデン拠点のVPNです。筆者が中国滞在中メインで使用していたVPNで、安定した接続堅牢なセキュリティが特徴です。Mullvadは完全ノーログを実践しており、アカウント作成時にメールアドレスすら不要という徹底ぶりです。料金も月額5ユーロの一律課金で長期割引はなく、逆に言えば一か月単位で気軽に使い捨てできるため、「長期契約したのに使えなかった」という事態を防げます。

中国での実力ですが、Mullvadは公式に中国向けの利用方法を案内している数少ないVPNの一つです。実際「中国など規制の厳しい国から接続する方法」として公式ヘルプに詳しい設定ガイドがあり、その手順に従えば接続可能です (Using Mullvad VPN in restrictive locations) (Are VPNs Legal in China & Can You Use Them in 2025?)。筆者もこのガイドに沿って設定を行い、Great Firewall下でも比較的安定してMullvadに接続できました。Mullvadが安定している理由の一つに、後述する通信の難読化(Obfuscation)技術への対応があります。中国で標準的なVPN通信がブロックされた場合でも、MullvadはWireGuardプロトコルのUDP over TCP機能や、OpenVPNプロトコルでのBridgeモード(Shadowsocks)を使って検閲を回避できます (Using Mullvad VPN in restrictive locations)。こうした高度な機能により、2024年現在でもMullvadは中国から接続できるVPNの一つとして名前が挙がっています (Are VPNs Legal in China & Can You Use Them in 2025?)。

加えて、Mullvadは広告的なマーケティングを行っておらず(クーポンやアフィリエイト制度もありません)、その分技術面の改善に注力している印象です。中国で確実に使えるメイン回線を求めるなら、Mullvadは有力な選択肢と言えます。

Proton VPN(プロトン)

ProtonVPNは、セキュリティに定評のあるスイスのメールサービス(ProtonMail)から派生したVPNサービスです。筆者はMullvadのバックアップ用途としてProtonVPNも併用していました。特にProtonVPNは無料プランを提供している点が大きな魅力です。無料ながら帯域無制限で使用でき(速度制限とサーバー数制限はありますが)、いざ有料VPNが繋がらなくなった緊急時の代替として重宝します。

ProtonVPNの無料プランではサーバーロケーションを自分で細かく選ぶことはできず、自動的に割り当てられるいくつかの国(日本・米国・オランダ等)のサーバーのみ利用可能です (Are VPNs Legal in China & Can You Use Them in 2025?)。それでも中国国外のサーバーに確実に繋がるため、基本的な閲覧用途には十分役立ちます。実際、ProtonVPNの無料プランは中国でも動作するとの報告が多数あり、バックアップ用途として理想的という評価があります (Are VPNs Legal in China & Can You Use Them in 2025?)。筆者の体感でも、Mullvadが何らかの理由で繋がりにくい時にProtonVPN無料サーバーへ接続してSNS閲覧やメール送受信ができ、助けられました。

公式としては中国本土での確実な動作を保証することはできないという声明を出しています。

Does Proton VPN work in China? | Proton VPN
We have some anecdotal evidence that our service may work China, but we cannot guarantee this.

ProtonVPNもノーログを掲げるサービスで、基本的なセキュリティは申し分ありません。スピード面では有料VPNに劣ることもありますが、「無料で使える最後の砦」としてインストールしておく価値があります。また、必要に応じて有料プラン(月額5ドル程度~)に切り替えればサーバー選択肢や高速専用サーバーも利用できるため、まずは無料で試しつつ状況に応じて柔軟に使うと良いでしょう。

Astrill VPN(アストリル)

AstrillVPNは、古くから「中国で使えるVPN」として名前が挙がるサービスです。実際、中国在住の外国人の間ではAstrill利用者も一定数おり、一時期は「中国と言えばAstrill」と言われるほどの存在感がありました。ただし筆者が試用した印象では、接続の安定性にやや難があり、UI(画面デザイン)も古めで使い勝手が今ひとつでした。アップデート頻度も少なく、最新プロトコルや新技術への対応という点で他サービスに遅れをとっている印象です。

第三者の評価でも、ここ最近のAstrillは「高価な割に不安定」「サポート対応が良くない」といった声があります (How To Bypass The Great Firewall Of China - GreyCoder)。Astrillは月額料金が他より高め(プランによっては月$20近く)で、さらに同時接続端末数に制限があったり、登録時に電話番号認証が必要だったりとハードルもあります (How To Bypass The Great Firewall Of China - GreyCoder)。かつては中国で動作する貴重なVPNでしたが、現在では他に選択肢が増えたため、どうしても必要な場合以外は優先度は高くないでしょう。

とはいえ、完全に使えなくなったわけではなく、状況によっては接続できる場合もあります。中国のVPN事情は刻々と変化するため、「以前ダメだったAstrillがまた使えるようになった」という可能性もゼロではありません。ただ、新規に契約するには値段や使い心地の面でリスクが高いので、すでに契約を持っていて代替として試す…といった位置づけかもしれません。

ExpressVPN・NordVPN(エクスプレスVPN・ノードVPN)

ExpressVPNNordVPNは、世界的に知名度が高い大手VPNサービスです。日本でもYouTube広告や口コミで耳にしたことがある人が多いでしょう。それぞれ高速サーバー網や使いやすいアプリを売りにしており、本来であれば有力な選択肢です。公式サイトでも「中国でも利用可能」といった表記が見られ、一見頼もしく思えます。

しかし実際のところ、現在の中国本土ではExpressVPNもNordVPNも接続が非常に困難なのが現状です。筆者自身2023年前後に両サービスをテストしましたが、どちらも中国からはサーバーに全く繋がらない事態が頻発しました。同様の報告はネット上にも多く、旅行者の口コミでも「以前は問題なかったのに、最近はExpressもNordも全然ダメ」という声があります (VPNs Blocked - China Forum - Tripadvisor)。実際、2020年代に入り中国当局が有名VPNを重点的にブロックするようになったと言われ、利用者が多いこれら大手は真っ先に狙われているようです。

ExpressVPNは30日返金保証や多彩なアプリで人気ですが、繋がらなければ意味がありません。NordVPNも独自プロトコル(NordLynx)など技術を投入していますが、中国では断続的にブロックされ「動いたり動かなかったり」を繰り返しています (Are VPNs Legal in China & Can You Use Them in 2025?)。公式の対応表明と実情にギャップがあるため、中国での利用目的でこれらを契約するのは慎重になった方が良いでしょう。もし既に契約を持っている場合は、中国渡航前に必ず最新バージョンのアプリを入手し、接続オプション(プロトコル変更やObfuscation設定など)を確認しておくことを強くお勧めします。

Surfshark(サーフシャーク)

Surfsharkは近年台頭してきた比較的新しいVPNサービスです。低価格で複数年プランを提供し、機能も充実しているため、日本でも利用者が増えています。筆者も2021年頃にSurfsharkを試したところ、当初は中国から接続でき「これは使えるかも」と感じました。しかし喜んだのも束の間、短期間でSurfsharkのサーバーが中国からブロックされ、接続不能に陥りました。どうやらSurfshark側が「NoBordersモード」等の中国向け対策を打っても、すぐにGFW側に見破られてしまったようです(イタチごっこの末期という印象でした)。

ネット上でもSurfsharkに関しては「最初は繋がったがすぐダメになった」という報告と、「いや自分はNoBordersでまだ使えている」という声が混在しており、安定性に欠けます。総合すると、Surfsharkは中国での長期利用には向かないでしょう。特に長期契約(2年プランなど)を安く契約しても、途中で使えなくなれば無駄になってしまいます。どうしても安価なVPNをという場合でも、Surfsharkよりは前述のProtonVPN無料版+短期有料VPNの組み合わせなどがリスクが少ないと考えられます。


以上が主なVPNサービスの状況です。結論として、中国で実用に耐えるVPNとしてはMullvadが第一候補、次点でProtonVPN(無料含む)をバックアップに置き、他はあくまで補助的・参考程度と見るのが現実的でしょう。次章からは、そうしたVPNを中国で快適に使うためのテクニックや設定について解説します。

4. 中国のネット環境の現実

VPNを語る上で忘れてはならないのが、中国国内のインターネット回線そのものの特性です。日本とはインフラ事情が大きく異なるため、VPN利用時には以下の点を念頭に置いておきましょう。

  • 国外回線が少なく遅い:中国は国内向けには高速なネットワーク網を整備していますが、国外へのインターネット帯域は政府の管理下にあり非常に限られています。その結果、海外とやり取りする通信は慢性的に遅延が大きく、速度も出にくい状況です (Great Firewall - Wikipedia)。これは検閲のため意図的にクロスボーダー通信を絞っている側面もあります (Great Firewall - Wikipedia)。したがって、中国から日本のサイトを見るだけでも日本国内から見るよりかなり遅く感じます。VPNを使うと通信経路がさらに遠回りになるため、遅延(Ping値)の増大や速度低下は避けられません。動画視聴なども日本での感覚でHD画質サクサク…とはいかず、低画質でなんとか見るか、頻繁にバッファ(読み込み待ち)が発生するでしょう。「VPNさえ繋げば日本と同じネット環境!」と過度な期待をすると肩透かしを食らうので注意してください。
  • 接続先サーバーの地理的選択:上記に関連して、VPNで繋ぐサーバーの場所によっても体感速度は変わります。一般に中国から近い香港・台湾・日本・韓国あたりのサーバーだと比較的マシですが、欧米のサーバーだとさらに遅くなります。特に動画ストリーミングやオンラインゲームなどリアルタイム性が必要な用途では、日本か香港のVPNサーバーを選ぶのが無難です(もっともそれでも日本国内からより遅いですが...)。Mullvad等ではサーバー選択時にLatency(遅延値)が表示されるので、それを目安にすると良いでしょう。
  • Tor(トーア)の利用可否とリスク:一部の技術に詳しい方は「Torを使えば完全匿名で検閲も回避できるのでは?」と考えるかもしれません。確かにTor(The Onion Router)は多段中継で匿名性を高めるネットワークですが、中国においてTorの使用は非常に困難かつリスクが高いです。まず、Torの公式サイトや公開ノードは軒並み中国からブロックされています。ブリッジと呼ばれる非公開ノードや特殊なプラグイン(obfs4など)を駆使すれば接続自体は可能かもしれませんが、Tor通信のパケットパターンは独特であり、当局には「これはTor通信だ」と筒抜けです (TOR access in China : r/TOR)。中国ではTorの利用自体が違法とみなされ得るため、内容が何であれトラフィックを傍受された時点で相当疑われます (TOR access in China : r/TOR)。実際「Torを使っているだけで公安にマークされる」「下手をすると拘束される」という話もあり、安全とは言えません。Torは強力な匿名ツールですが、中国留学中に迂闊に手を出すのは避けましょう。素直に安全なVPNを利用する方が賢明です。

以上より、中国ではネットが遅いのは当たり前、VPNで若干マシにするが限界もあると理解しておきましょう。日々のSNSや情報収集には問題ありませんが、日本での日常感覚をそのまま持ち込むとストレスを感じるかもしれません。学業に必要な範囲で上手に付き合っていく心構えが大切です。

5. VPNの技術と設定

この章では、実際に中国でVPNを繋ぐために役立つ技術的な知識や設定方法について解説します。少し専門的な内容も含みますが、ポイントを押さえておくといざという時に役立ちます。

Obfuscation(難読化)技術について

Obfuscation(難読化)とは、その名の通り通信をわざと分かりにくくする技術です。中国のファイアウォールはVPN特有の通信パターン(例えばVPNプロトコルのヘッダー情報など)を検出してブロックします。その検出を回避するため、VPN通信を通常のHTTPS通信や他のプロトコルにカモフラージュするテクニックが各VPNで使われています。

具体的な例としては、「UDP over TCP」や「Stunnel」といった方法があります。たとえばMullvadのWireGuardプロトコルでは「UDP over TCP (Obfuscation)」というオプションをオンにすることで、通常UDPでやり取りするパケットをTCP上に偽装して送ることができます (Using Mullvad VPN in restrictive locations)。これにより、ファイアウォールから見ると普通のTLS通信(HTTPSのようなもの)に見えるためブロックされにくくなります。

また、Shadowsocks(シャドウソックス)というプロキシ技術も広く使われています。Shadowsocksは元々中国の開発者が作ったと言われる軽量なソックスタイププロキシで、VPNよりも検出されにくい設計です。Mullvadを含むいくつかのVPNでは、このShadowsocksをエントリー(入口)として使う「Bridgeモード(ブリッジサーバー)」が用意されています (Using Mullvad VPN in restrictive locations)。クライアント側からまずShadowsocksサーバーに接続し、そこから先でVPNトンネルを確立する二段構えにすることで、検閲をすり抜けやすくするわけです (Using Mullvad VPN in restrictive locations)。Shadowsocks以外にも、v2rayやXTLS、SSHトンネルなど様々な難読化手段がありますが、ユーザーとしては提供されているものを有効化するだけでOKです。

難読化は万能ではありませんが、中国でVPN接続成功率を上げるためには必須の技術となっています。利用するVPNに難読化オプションがあれば必ず設定でオンにしましょう(「Stealth VPN」「Obfuscation」「Scramble」等の名称で存在します)。逆に、このような機能を持たないVPNは中国で使うのはほぼ無理だと考えてよいでしょう。

Mullvad VPNの詳細設定例

前述のMullvadを例に、中国での具体的な設定方法を紹介します。筆者が実際に中国滞在中に使用していた設定でもあります。

  • アプリとアカウント準備:まず日本にいる間にMullvadのアプリをダウンロードし、アカウント番号を発行しておきます(メール不要でサイトからワンクリックで取得できます)。有料利用する場合はクレジットカードやBitcoin等で1ヶ月分(5ユーロ)をチャージします。これらは中国に入ってからではサイトブロック等で難しいので事前に全て済ませておきます (Are VPNs Legal in China & Can You Use Them in 2025?)。
  • 難読化の有効化:Mullvadアプリを開いたら設定(歯車アイコン)→VPN設定で、まずトンネルプロトコルを「WireGuard」に変更します。その上で「WireGuard設定」欄にあるObfuscation(UDP-over-TCP)をオンにします (Using Mullvad VPN in restrictive locations)。これでWireGuardプロトコルが難読化され、中国からでも接続しやすくなります。筆者の環境ではまずこのWireGuard Obfuscationで大半の時間繋がりました。
  • サーバー選択:難読化をオンにしたら、サーバーロケーションを選びます。Mullvadは世界各国にサーバーがありますが、筆者は主に日本サーバー香港サーバーを使っていました。日本サーバーを使う利点は、日本のサービス(Netflixや銀行サイトなど)の地域制限を回避できること、そして日本帰国時と同じ環境でインターネットが使える安心感です。香港サーバーは地理的近さから速度面で若干有利な場合があります。実際に試してみて安定する方を使うと良いでしょう。接続が成功しない場合は、サーバーを変えて何度か試行します。MullvadはサーバーごとにIPが違うため、あるIPがブロックされていても別のに当たれば繋がることがあります。
  • 接続状況の確認:接続ボタンを押して「VPN Connected」となれば成功です。繋がらない場合は、WireGuardではなくOpenVPN(Bridgeモード)を試す手もあります。設定でトンネルプロトコルをOpenVPNにし、OpenVPN設定でBridge modeをオンにした上で、エントリサーバーに香港や台湾等のブリッジ用サーバーを選択し、エグジットサーバーに日本などを指定する方法です (Using Mullvad VPN in restrictive locations)。少し高度ですが、どうしてもWireGuardでダメなときの最終手段として覚えておくと役立ちます。

以上がMullvadの基本的な設定です。他のVPNでも、可能な限り「プロトコル:自動ではなくOpenVPN/WireGuard明示」「難読化:有効」「ポート:443など一般的なものに偽装」などの設定を試してみてください。中国では設定一つで繋がりやすさが劇的に変わることもあります。

日本のSIMを海外ローミング+VPNで活用する方法

ネット検閲を回避する裏技的手段として、日本の携帯SIMを中国でローミング利用する方法があります。実は中国国内において、日本を含む外国の携帯キャリアのSIMでデータ通信を行うと、その通信は基本的に中国のGFW検閲の対象外となります (Do I still need VPN even if I use an international sim? - Beijing Forum)。つまり、日本のスマホを持って行って現地でローミングデータ通信を使うと、中国にいながらにして日本と同じようにインターネットを閲覧できる場合があるのです(キャリアによって経路が異なるため絶対とは言えませんが、一般的にそのように動作します)。

とはいえローミング通信は高額になりがちですし、常用するのは現実的ではありません。そこで日本のSIM+VPNの組み合わせです。例えば、銀行やクレジットカードのオンラインサービスなど特にセキュアな通信が必要な場面だけ、日本のSIM(海外ローミング)を使って接続し、さらに安全のためその上でVPNを日本に繋いでアクセスするという方法があります。こうすれば通信経路は「中国キャリア網→日本の携帯網(ローミング先)→VPNで暗号化→日本のサーバー」となり、極めて日本国内アクセスに近い環境が再現できます。筆者も中国滞在中、どうしても繋がりにくい日本の政府系サイトや、一部中国ネットからではSMS認証が届かない日本のWebサービス利用時などに、手持ちの日本SIMを差したモバイルルーター経由でVPN接続して凌いだ経験があります。

この方法のメリットは、中国側のインフラに一切依存しないことによる信頼性です。仮に中国のWi-Fiやブロードバンドが遮断されても、ローミング通信が生きていればバックアップ回線になります。ただしデメリットとして料金(データローミング料金)が高い点、そして常時使用すると日本側キャリアの規約に触れる可能性がある点に注意しましょう。あくまで「ここぞ」という時の手段として覚えておき、普段は通常の中国ネット+VPNで十分です。

6. VPN利用時の注意点と実践的TIPS

最後に、中国でVPNを使う上での細かな注意点やコツをいくつか挙げます。実践的なティップスですので、ぜひ参考にしてください。

  • VPNクライアントや設定の頻繁なアップデート:中国当局とVPN提供側の攻防は日々進んでいます。そのため、VPNアプリや設定も最新のものに更新することが重要です。渡航前はもちろん、可能であれば中国滞在中も定期的にVPNアプリをアップデートしましょう(アップデート情報自体が取れない場合は、一時帰国時やローミング接続時に行う)。アップデートによって新しい難読化手法が追加されたり、ブロックされたサーバーリストが更新されたりします。「繋がらない」と感じたらまず最新版か確認、これは鉄則です。
  • 長期契約の落とし穴と短期契約の利点:前述の返金保証の話とも関連しますが、VPNサービスは1年・2年まとめ払いプランが割安に設定されています。しかし中国で使う場合、長期契約はリスクが高いです。契約途中で使えなくなっても返金期間を過ぎていれば損失になります。実際筆者も過去に某VPNを年契約した直後に接続不能になり、泣き寝入りした苦い経験があります。おすすめはまず月契約か3か月程度の短期で様子を見ることです。調子良く使えて「これならいける」と思ってから、必要に応じて延長する方が安全です。Mullvadのようにそもそも長期割引が無いサービスは、この点ユーザーに優しいと言えます。学生の場合、学期単位や滞在期間に合わせて柔軟に契約期間を調整すると良いでしょう。
  • VPNは渡航前に用意しよう:中国に入ってからVPNを調達しようとしても、そもそもVPN公式サイトがブロックされて見られなかったり、アプリストア(Google Play等)が使えなかったりして困難です (Are VPNs Legal in China & Can You Use Them in 2025?)。VPNの契約とアプリDL、設定の事前テストは日本にいるうちに必ず行ってください。渡航前にスマホ・PCの両方に少なくとも2種類以上のVPNクライアントをセットアップし、動作確認しておくと安心です。特にiPhoneユーザーは、中国のAppStoreでは一部VPNアプリが消えているため、日本にいる間にインストールしておく必要があります (Are VPNs Legal in China & Can You Use Them in 2025?)。
  • 非常時の多重手段確保:どうしても繋がらない場合の手として、複数の方法を持っておくと安心です。例えば「メイン:Mullvad、サブ:ProtonVPN、予備:日本SIMローミング」といった具合にバックアップを重層的に確保しておけば、万一一つがダメでも他で凌げます。中国留学は長期戦ですので、「二重三重に手を打っておく」のが安全なネット生活への鍵です。
  • 現地情報の収集:中国のVPN事情は微博(ウェイボー)や微信(ウィーチャット)など現地SNSではあまり共有されませんが、Redditの/r/China/r/VPN、Twitterの一部ユーザーなどが最新情報を発信しています。英語にはなりますが「どのVPNが今生きているか」といった話題をチェックすると良いでしょう (Are VPNs Legal in China & Can You Use Them in 2025?)。ただし中国国内からそれらを見るには結局VPNが要るというジレンマはありますので、情報は出国前やローミングを活用して入手しましょう。

7. まとめ

中国留学に向けたVPN活用術をまとめました。要点を振り返ると以下の通りです。

  • VPNは検閲回避の生命線:中国ではGoogleやSNSなど多くがブロックされています。VPNを使えばそれらにアクセス可能ですが、通信は遅くなるので過度な期待は禁物です。
  • VPN選びは慎重に:ノーログポリシーを持ち、実績のあるサービスを選びましょう。広告的な「○○が一番!」という宣伝文句には要注意 (The Trouble With VPN and Privacy Review Sites - Privacy Guides)。中国で確実に使えるとの評判があるMullvadが最有力で、ProtonVPNの無料版をバックアップに持つのがおすすめです。大手のExpressVPNやNordVPNは現在信頼性に欠け、Astrillも費用対効果を考えると優先度低め、Surfsharkは長期利用に不向きという結論です。
  • 設定と運用で工夫する:難読化オプションは必ず活用し、接続プロトコルやサーバーを工夫しましょう。MullvadならWireGuard ObfuscationやBridgeモードが効果的 (Using Mullvad VPN in restrictive locations)。日本のSIMローミング+VPNという裏技も、重要な場面では役立ちます (Do I still need VPN even if I use an international sim? - Beijing Forum)。
  • 常にプランBを:VPNは完璧ではないので、複数準備・短期契約でリスクヘッジしましょう。何より渡航前の準備が成功の鍵です。現地ではこまめに情報収集し、環境の変化に対応できるようアップデートを怠らないことも大切です。

最後になりますが、ネット検閲を乗り越えることばかりに気を取られず、学業や現地での生活そのものも存分に楽しんでください。VPNはあくまでツールです。安全に使いこなしつつ、中国での留学体験を充実させる一助になれば幸いです。健闘を祈ります! (TOR access in China : r/TOR) (Great Firewall - Wikipedia)


中国では通信の検閲が行われているけれど、通信の検閲自体は世界中で珍しいものじゃない。大義名分が異なったり公になっているかどうかの違いぐらいなもんだ。

ここでは中国に限った話題で検閲がどのように行われているのか、どのようにして回避できるのかといった内容を技術的側面からできるだけ詳しく書いてみた記事もあるので気になった人は見てみたら面白いかもしれない。