写真の物理学 ⑯ 収差の物理学
📐写真の物理学シリーズ ⑯ このシリーズでは、写真にまつわる現象を物理学の言葉で記述する。「なんとなくそうなる」を「なぜそうなるか」に変換することが目的である。 薄肉レンズの結像公式は、光線が光軸に対して小さな角度で入射するという「近軸近似」の上に成り立っている。現実のレンズでは光軸から離れた光線がこの近似を破り、さらにガラスの分散によって波長ごとに焦点位置がずれるため、像は理想的な一点に集まらなくなる。本記事では、このずれを総称する「収差」を、スネルの法則の非線形性と分散の両面から体系的に整理し、非球面レンズによる補正戦略と収差がボケの質に与える影響までを論じる。 スネルの法則の非線形性と近軸近似の限界 光と物質の相互作用で導いたスネルの法則は $n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2$ である。薄肉レンズの結像公式を導出するとき、私たちは $\sin\theta \approx \theta$ という近似を使った。これが近軸近似であり、光軸に近い、角度の小さな光線だけを扱う限りにおいて成立する。 しかし $\sin\theta$ をテイラ