そこにいなかった人たち
あなたはそこにいた。間違いなく。GPS がそう言っている。写真のタイムスタンプもそう言っている。SNS の投稿もそう言っている。でも、あなたはそこにいたのだろうか。 スマートフォンを構えた瞬間、あなたはその場所から静かに退場している。物理的にはそこに立っている。でも、意識はもう「今ここ」にはない。フレーミング、露出、アングル、そしてその写真を誰に見せるか。あなたの頭はすでに未来にいる。まだ存在しない聴衆に向かって、まだ起きていないリアクションを想像している。 現在は、あなたの手からすり抜けていく。 観察者は参加者になれない これは別に新しい話ではない。スーザン・ソンタグは1977年の時点で、写真を撮ることの本質をこう見抜いていた。写真とは「捕獲された経験」であり、カメラは「意識の貪欲な気分における理想の武器」だと。撮影するとは、被写体を「自分のもの」にすることであり、それは世界との関係を「知識のようなもの」に、つまり「権力のようなもの」に変換する行為だと。 ソンタグの言葉を借りれば、観光客の経験は「立ち止まり、写真を撮り、